流体工学・安全工学部門プロジェクト

トンネル火災シミュレータの高機能・高精度化

 トンネル火災時の熱と煙に流動を解析するCFDシミュレータを独自に開発しています。実大トンネルでの火災実験など様々な現象との比較を積み重ね,定量的な予測精度の検証を行っていることが大きな特徴です。このプログラムは20年以上前に開発され,東京湾横断道路(アクアライン)トンネル,新東名高速道路,首都高速山手トンネル,東京外環道路など日本の主要な高速道路の火災安全対策に使われています。


 写真は開通前の新東名高速道路で実施した国内最大規模の火災(9m2ガソリン火皿)実験です.この実験に対するシミュレーション結果を左下の図に示します。路面からの高さが8mと4.5mの延?方向の温度分布です。マークの実験結果と実線のシミュレーション結果とが良く一致するのが確認できます。このように単にシミュレータを開発するだけでなく,実験を通して様々な現象の再現性について確認しながら開発を進めているのが本研究室の大きな特徴です。

煙中避難行動シミュレータの開発

 火災時の避難シミュレータはいくつか開発されていますが,煙中の行動シミュレータはほとんど見られません。本研究では実際のトンネルを用いて煙を充満させた状態での避難実験を通して新たな避難モデルの構築を目指しています。そのモデルを煙挙動解析プログラムと組み合わせた避難シミュレータの開発に取り組んでいます。

トンネル火災安全性の評価(日本風評価と欧州風評価の融合)

 トンネル火災安全に対する日本の考え方と欧州の考え方は大きく異なっています。日本では,安全な避難環境を利用者に提供する,という考え方で火災時の排煙運用計画が立てられています。一方,欧州では,リスク解析の普及に伴って,死亡者を無くことを目標として排煙運用が考えられています。基準の国際的な統一の大きな流れもあり,基本的なポリシーの違いと片づけるわけにもいきません。そこで,従来の日本風の考え方を尊重しつつも,欧州風の人的被害の軽減という面も考慮した評価方法の開発を目指しています。

広域災害時の避難トンネルの提案

 地震による大都市部広域災害時における安全な避難を可能にする避難トンネルを提案しています。今までの対策と全く異なっているので,実現までの壁は高いですが,海外も含めて提案していきたいと思っています。

 日本は周辺をプレートで囲まれ,世界でも有数の地震大国です。このため,関東大震災,阪神大震災,東日本大震災など多くの地震にみまわれ,人的・経済的被害を被ってきまし。.大都市部では,建造物倒壊による道路封鎖や同時多発火災による犠牲者の抑制が課題とされ,建物の耐震化及び不燃化や,密集市街地の再開発による道路幅の拡張等を実施していますが,費用の大きさや多数の調整先により計画の実現までには多大な時間が必要となります。もし,地下空間を利用した避難トンネルによる避難システムが構築できれば,危険な地上を?時間移動する必要がなくなり,特に避難弱者にとってメリットが大きいと期待できます。また,救助・救援活動にも有効に活用することが期待できます。本研究では,避難トンネルによる市街地災害時の避難システムを提案し,避難シミュレーションにより避難トンネルの基本特性を整理するとともに,そのシステムと建設コストおよび既存社会インフラの有効活用の可能性について,検討することを目的としています。

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