研究分野:非線形科学

非線形性に起因する多様なダイナミクスを、理論・実験の両面から研究するのが非線形科学です。普遍的な数理的メカニズムに焦点を当てることが多く、分野横断的な性格を持ちます。カオスは、非線形ダイナミクスの代表例です。決定論的な時間発展ルールに従いながら、確率的現象と見紛うほど乱雑に変化する挙動のことを(決定論的)カオスと言います。カオスの発生は、時間発展ルールが完全分かったとしても、遠い未来の予測は難しいという、予測の原理的困難さをもたらします。また、一見デタラメに見える現象のなかには、決定論で説明できるものがあることを示唆します。本研究室では、光デバイスにおけるカオスに着目して研究しています。

研究内容:カオス理論の2次元微小共振器研究への応用

半導体レーザー等で用いられる光の共振器は、従来、1次元的構造でしたが、微細加工技術を用いて、2次元的な共振器が作製されるようになりました。典型的な形状は、円盤型です。このような2次元共振器は、光を強く閉じ込めることが可能なほか、多様な空間パターンのモードを持つことから、新たな物理現象の発見や、新規光デバイスの実現を目指して研究が行われています。2次元共振器では、形状を非対称にすると、一般に、光線軌道がカオス的挙動を示します(図(a))。波動的な共振器モードの強度パターン(図(b))や、実験で観測される光の放射パターン(図(c))には、光線カオスが刻印されています。すなわち、図(b)に示した例では、共振器の左右の端から、上下(±90度)方向に強い放射が見られますが、その機構は、図(a)に示した光線カオスのダイナミクスによって説明出来ます。



図. (a) 2次元共振器内の光線軌道(光線カオス)。(b) 共振器モードの光強度分布(数値計算)。共振器外ではlog表示にして放射を強調している。(c)放射の遠視野パターン。光線シミュレーションの結果は、実際の素子の観測データの特徴を良く再現する。

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